俺が生まれる七年前に

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「あと、その……」  隠す様にして持っていた、自分の指輪をはめる。沙耶にそれが見えるようにしながら、 「ごめん、これペアリングで、その……、嫌だったり、する?」  伺う様にして顔を見る。  沙耶は自分の指輪と俺の指輪を少し見比べて、 「ぜんぜんっ」  なんだか泣きそうな声でそう言った。  そのまま、首筋に抱きつかれる。  少し態勢を崩し、そのあと慌ててその背を支える。 「ありがとう、嬉しい、どうしよう」  泣いている声で言われた。どうしよう、困った、嬉しいのは俺の方だ。 「嬉しい。指輪、欲しいなって思ったけど。あたしが言うと重いかなって。だけど、やっぱり嬉しい。ありがとう」  よかった、本当によかった。指輪にしてよかった。こんなに喜んでもらえて、嬉しいのは俺の方だ。  腕が離れる。  少し赤い目で沙耶が笑う。 「、誕生日、おめでとう」  向かい合ったまま指を絡める。指輪がかちゃり、と音をたてた。  そのままそっと、一度唇を合わせる。 「いつか、さ」 「うん?」  額を額をくっつけたまま、 「これは本当に安物なんだけど、いつか、もっといい物、プレゼントさせて?」  言うと、まったくもうっと少し怒ったような言葉が返ってきた。でも、それが照れ隠しだっていうのは、分かっている。  左手の指輪の感覚、普段付け慣れない感触に戸惑いながらも、もう一度口付けた。  そう、願わくは、これから数年後、もう一度きみのその手に指輪をはめることができますように。
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