俺が生まれる七年前に

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 まあ、あのサイズを確認したときの自分は浮かれていたとしか、言いようがない。なにが、あとは買い物に行けばいい、だ。指輪を買う事の大変さも知らずに。  百貨店の入り口付近で、立ち並ぶ数々のジュエリー売り場を見ながら、そんな風に思った。まず、どこの店がいいのかがわからない。  悩みながらもこのまま立ち止まっていたらただの変な人なので、ゆっくりと歩き出す。ちらちらと横目で確認しながら、フロアを巡る。どこも同じに見える。  なにか沙耶が好きなブランドとかあるのかな。わかんないなー。本当に俺、沙耶のことなんにも知らないなー。  とりあえず、売り場をぐるりと見回し、俺でも名前を知っているお店に近づく。価格相場もわからないけど。 「いらっしゃいませ」  洋服売り場とかで聞くのとは違う、少し落ち着いたトーンの「いらっしゃいませ」に、少し体が強張る。なんか、怖い。  ショーケースの中をのぞく。キラキラしたネックレスにピアス。値段も一緒に確認すると、手が届く範囲の値段で一安心した。お金が足りなくて離れるとかなんか恥ずかしいし。 「なにか、お探しですか?」  笑みを浮かべた店員さんの言葉に、曖昧に笑いながら 「えっと、指輪を、プレゼントの」  もごもごと言葉を返す。 「指輪でしたら、こちらになりますね」  左手の方のショーケースに移動する。  ずらっと並んだ指輪の数々に圧倒される。選ぶの? ここから? 「なにかご希望のデザインなど御座いますか?」 「あ、いえ……」  特には、となんとなく言葉を返しながら、ショーケースに目を走らせる。店員さんの微笑みに圧迫感を覚える。
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