俺が生まれる七年前に

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 なんだかどれも似たような感じに見えるし何がいいかわからない。挫けそうになる。でも、喜ぶ顔が見たいから、少しでも気に入ってくれそうなものを探したい。  並ぶ数々の指輪に目をやる。一つ気になったものがあって、行き過ぎた視線をまた元に戻した。  ピンクっぽい緩やかなうねりのあるデザインの指輪。中央に控え目に小さな石が三つ程光っている。  俺の視線を追っていた店員さんは微笑んで 「よかったらお出ししましょうか?」 「あ、えっと、お願いします」  お待ちくださいね、と微笑んで取り出される。  ガラスを挟まないで見るそれは、最初の印象通り沙耶に似合いそうだった。あんまりごてごて主張したりしないで、シンプルで繊細な感じと、それから柔らかいピンク色の光が。 「こちらの商品は、ペアリングになりますね。なので単品での販売はしていないのですが……」  言いながら店員さんが、似たようなカーブを描く指輪を取り出す。こちらはシルバーで石がついていない。  ペアリング。そっか、そういうものも世の中にはあるのか。でもなぁ、単体ならともかくペアリングもらって嬉しいかなぁ。 「ペアリングをご希望ですか?」 「まだ、決まってなくて」  慌てて答える。そうですか、と店員さんは微笑んだ。  もらって嬉しいかなー。あの子は夢見がちだから、という円さんの言葉を思い出す。でも、変なところ現実的だしな、どうだろう。
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