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「こちら女性用がピンクゴールドで、男性用がホワイトゴールドになっておりまして」
店員さんの話を、はぁと適当に頷きながら聞く。
嫌がるかな。喜ばれないのは悲しいけど、嫌がられたら立ち直れない。
とはいえ、沙耶が贈り物を嫌がるなんてことするかな。でも、嫌なものをはっきり嫌とは言わないタイプだしな。
でも、他のどの指輪よりもこれが沙耶に似合うと、俺は思う。理屈とかじゃなくて直感だけど。絶対に似合う。それが、結局大事なんじゃないかなぁ。
沙耶へ似合う指輪を探したら、たまたまそれがペアリングだっただけで、もう一個指輪がついてきたようなものだし。
脳内で理論武装を開始する。万が一嫌がられても心が折れないための。
そして、やっぱりペアリングに対する憧れみたいなものも、俺自身にあるわけで。
よし、っと一つ頷く。
「これ、お願いします」
微笑を浮かべた店員さんに、勢いを付けて言いきった。
「かしこまりました」
笑顔を崩す事のない店員さんの顔を見ながら、一つ小さく息を吐く。なんでこれ、こんなに緊張するんだろう。
こういうことをさらっと日々こなしているであろう田村をほんの少し、ほんのすこぅしだけ尊敬した。
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