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どうにか指輪も購入して迎えた、沙耶の誕生日当日。幸い、今年は土曜日だったので沙耶の仕事は休みだ。
お昼の一時間ぐらい前に、沙耶の家のチャイムを押した。
「おはよう」
微笑みながら沙耶がドアを開ける。そして、俺の両手をみて首を傾げた。
「どうしたの? その荷物」
右手にスーパーの袋を、左手に紙袋を抱えている。
「うん、ちょっと。誕生日、おめでとう」
「あ、ありがとう。とりあえず、どうぞ?」
部屋に入ると、両手にもった袋をテーブルの上に置く。
「あのさ、お昼ご飯、俺が作ってもいい?」
「え?」
沙耶の大きな瞳がさらに大きくなる。
「だめ?」
「だめなことはないけど……、大丈夫?」
不安そうに顰められた眉。そりゃあそういう顔にもなるだろう。一人暮らしもしたことがない、殆ど自分で料理を作る機会がない俺だし。
「多分」
正直に答える。
「でも、いつも沙耶にご馳走になっているし、せっかくの誕生日なのに美味しい、いいものをご馳走するのも出来ないし……」
だから、と出来るだけ微笑んでみせた。
「時間かかるかもしれないし、上手くいくかもわからないけど……、いいかな?」
沙耶は少しだけ俺の顔をみたあと、破顔した。
「うん、お願いします」
その顔に救われる。
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