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「ごちそうさま」
両手を合わせて微笑み、
「本当に、ありがとね。嬉しい」
だめ押しのようにもう一度沙耶は言った。
「よかった。でも、あとデザートがあるんだ」
「本当? すごい」
二度両手を叩く沙耶に、少し待っててと席を立。
冷蔵庫の中から、家で作ってきたケーキをとりだす。苺が沢山のったケーキ。ロウソクを長いのを二本、短いのを六本さすと、灯をともす。
誕生日の歌をうたいながらもっていくと、沙耶は恥ずかしそうに少し俯いた。残念ながら俺もすごく恥ずかしい。この部分はいらなかった気がする。
それでもなんとか歌い終わると同時に、少し照れた様子で沙耶が火を消した。
「誕生日、おめでとう、沙耶」
沙耶は少しだけ赤い顔で、はにかんだように笑う。
「ありがとう、こういうの本当に久しぶりで恥ずかしいけど、どうしよう、嬉しい」
訂正。やってよかった。頬に手を当てて、どうしよう嬉しいなんて呟かれたら、俺の少しの気恥ずかしさなんてどうでもいい
「切り分けてくるから、ちょっとまってて」
これで終わりじゃない。問題はここからだ。 なるべく大きい苺で、生クリームが綺麗にできている部分を選んで切り分ける
よし、これで大丈夫。一つ深呼吸して、
「お待たせ」
そのケーキを沙耶の前に置く。
「……これ」
ケーキをみて、小さく沙耶が呟いた。具体的には、ケーキの苺に軽くのせられた指輪をみて。
「その、迷惑じゃなかったら、もらってくれない、かな?」
沙耶の左手をとる。どうしよう、手が震える。その薬指に指輪を通す。
ああ、思った通りだ。この指輪はよく似合う。
沙耶は左手をそっと目の高さまで持ち上げて、眺める。
「ごめん、安物なんだけど」
「ううん、どうしよう、嬉しい、ありがとう」
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