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今までこの問題に直面しなかったことが不思議でしょうがない。
「カノジョへのプレゼント?」
「自分で考えろよ、俺が今独り身なの知ってんだろ」
「ひでぇ」
友人の割と冷たい言葉に、思わず情けない声が出た。
長期休暇に入った学食は、昼食時とは微妙にずれていることと相まって、人がまばらにしかいない。
「そのラーメン代、俺が出してんだからちょっとは知恵を貸せ」
大学の友人、田村はゆっくりとラーメンに目を落とした。大体、お前が今、独り身なのは自分の浮気が原因だろうが。
「まあ、そうだな」
どんぶりを両手で守る様にして持ちながら田村が頷いた。
「いやいや、俺は最初から相談に乗るつもりだったからな? まさかの相談内容に驚いただけで」
その隣で菊川が言った。律儀な菊川は、お昼奢るという提案はさくっと却下した。
「で、なんでプレゼント?」
「誕生日」
「榊原のカノジョって年上だっけ? 何歳上?」
「七歳」
「七歳っ!?」
田村が大声をあげ、一瞬まばらな視線が集まる。恥ずかしいなおい。
「なんだそれ羨ましいな! 年上のおねーさんにリードされるとかっ!」
「お前がいうとなんかいかがわしいんだよなぁ……」
「写メないの? チュープリでもいいよ」
「なんでだよ! っていうか、ねーよ!」
「顔見ないとどんなプレゼントがいいかわからないだろ!」
「顔にでかでかと興味本位って書いてあんぞお前!」
見せないと黙らないだろう。数少ないカノジョの写真をデータフォルダから探す。基本撮らせてくれないんだよな。恥ずかしいとか言って。
ええっと、これは家でくつろいでいる時のだから駄目だし、こっちはちょっと本来の可愛さが伝わらないし……。
探した写真を差し出す。一番可愛い、それなりによそ行きの写真。
田村はケータイを奪い取る様にし、菊川も横からのぞきこむ。
「うわっ、可愛いじゃんっ! 黒髪ストレートとか最高だろ! なんでこんな美人なおねーさんと付き合ってんだよっ」
見せたら見せたでうるさい……。
「なんで田村に相談しようと思ったんだよ」
隣の田村を横目でちらりと見てから、菊川が言った。
「……恋愛経験だけは豊富だろ?」
人選誤った気もするが。一人で俺も年上と付き合いたい! とかあほなこと言っている田村を見て思った。
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