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『沙耶の指輪のサイズ?』
電話の向こうのどこか楽しそうな声。
『知らないや。多分、あの子自身知らないんじゃないの? 何、誕生日?』
笑みを含んだ声で言われて、曖昧に返事をする。
困った時の頼みの綱。沙耶の上司であり、沙耶を小さい頃から知っていて、姉妹のように仲がいい円さんに尋ねてみた。沙耶と無事付き合う様になったのは、大部分が円さんのおかげだ。
『こっそり測るしかないんじゃないのー?』
「あー、がんばります」
『一緒に買いに行くとかでもいいと思うけど。でも、龍一君は内緒にしたいのね?』
「もしかして、一緒に買いに行った方がいいものですか?」
『私は趣味じゃないものもらったら困るから自分で選びたいけど』
「……マジですか」
一人で買いに行く気満々だった。
『でも、沙耶が龍一君が選んだ物趣味じゃないとかそんなことないでしょ』
あっけらかんと言われた。
『あの子は、龍一君がくれるものが自分の欲しいものなのよ、基本ね』
くすくすと笑い声。意味を理解するまで少し時間がかかった。なんだろう、すごくくすぐったい。
『いいわねー羨ましい』
「円さんはその後……」
『何っ!?』
「なんでもないです」
きつい声が返って来て慌てて黙る。恋愛状況はよろしくないようだな。
「あと確認したいんですけど。沙耶、指輪が嫌いとかそういうことは……?」
『ないでしょ。あの子、冷めているようでなかなかにロマンチストっていうか夢見がちだし。寧ろ喜ぶと思うけど?』
「ならいいんですけど」
少し安心した。こういうことについての円さんの意見は間違ったことがない。しかし、他人に確認とらないとカノジョの趣味もわからない自分が情けない。
「あ、あと、それからもう一つ。相談というか、お願いがあるんですけど……」
三日三晩考えてようやく思いついた、サプライズについて、協力を仰いだ。
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