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さて、どんなに誕生日プレゼントを考えても、上手くいかなければ無意味だ。どうにかして、沙耶の左手の薬指にリボンを巻かなくては。
基本的に、「ご両親が心配するからはやく帰りなさい」って夕飯食べたらすぐに家に帰されるし、そうでなくても沙耶は異様に寝起きがいいので、彼女が寝ている場面なんて滅多に出くわさない。
だから、沙耶が珍しくソファーでうたた寝している今は大変チャンスなわけで。
指輪にしようと決めてから早二週間。正直そろそろタイムリミットだし、素直にサイズを聞こうと思っていたところだ。
土曜日の昼下がり。お昼ご飯を食べて、夕方からの映画がはじまるまでのしばらくの間、沙耶の家でのんびり本を読んでいた。本を読んでいる最中に寝るというのも珍しい。最近、仕事忙しいみたいだしなー。
「沙耶?」
声をかけてみる。返事はない。
読んでいた雑誌をそっと床に置くと、鞄から赤いリボンをひっぱりだす。家にあったお菓子かなにかのやつ。
そっと近づく。左手……。と思ったら左手に本を持っていた。そっと、ゆっくりと、とりあげる。
「んっ……」
小さいうめき声に動きが止まる。固まったまま、状況を見守る。起きない。
ゆっくり息を吐くと、持っていたリボンを左手の薬指にそっと巻き付ける。ええっと、これで印つけて……、あ、ペン持ってない。
リボンをそのままにして、辺りを見回して筆記具を探す。表立った場所にはなかった。しかたがないので、そのままそっと足を伸ばして自分の鞄を引き寄せる。行儀悪いな、見られたら沙耶に怒られそう。
鞄の中から投げ入れていたボールペンをとりだし、そっと印をつける。手が震えて沙耶の指にまでペンが滑る。やばっ。
慌てて手を離して確認したけど、インク自体はついていなかった。危なかった……。
ゆっくりとリボンを引き抜いて、あとはこれの長さを測って表と照らしてサイズを調べればいいんだよ、な?
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