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「お宅のお子さんは、どこの高校へ進学するの?」毎年この時期になると決まって主婦たちの間でこういう話題が出ます。そんなことはどうでもいいのですが、主婦は夫や子供が出す結果で優劣を付けたがるものです。中には、「お義母さまに呼び出されてるから」と姑のせいにしてその場から離れる者もいます。どこの高校へ進学しようと本人の問題だから、よそんちの主婦には関係ないのに、いつまでもその事で口泡を吹かせています。
そんな事を知らない受験生たちは、本場に向けて準備を進めています。よそんちの主婦たちの妬みや嘲笑を跳ね返そうと躍起になってる母親たちは、我が子にハッパをかけます。「あなたのためよ!」と言ってるのは、母親たちが他のママ友へ見栄を張る為の手段でもあります。「あの子のようになってはダメ!」と言ってるのも、仲が悪い他のママ友との確執からくるものでした。
大人同士の交友関係に巻き込まれているのを知らずに、受験生たちは本番に臨みます。
その後、合格発表の日が来ました。受かった子も滑った子も掲示板の前で自分の受験番号を確認します。合格した子は記念撮影をし、滑った子はさっさと帰ります。
入学式まで慌ただしい日々を送り、それぞれの学校の入学式に臨みます。その後、それぞれのカリキュラムに従って学び、卒業式を迎えます。
その後、進学する者や就職する者とそれぞれの人生を歩みます。中学生の時まで同じ土俵に立っていたはずなのに、この年になると、身分差が出てきます。年収など社会的立場からくる差が開いて貧富の差が現れ始めます。
結婚する歳になると、相手から「どこの高校出たの?」と切り出されます。そこから、その人が自分と身分相応なのか見極めるのです。中には能力以上の学校名を出して威張る者がいますが、すぐに相手に嘘がバレます。
この地域では、出身高校で仕事・結婚が決まるために大学名よりも高校名を重要視するのです。それが嫌で東京へ移住する者が出るくらいです。よっぽど頭が良いか、頭が悪すぎる者しか残らない地域では、毎年こんなくだらない話題が上ります。
この風潮に嫌気がさす佐々木家は、転勤を口実に東京へ出ました。そこでマンションを購入して定住することになりました。そして、県人会に加盟せずに都会人として生きる事を家族と共に誓うのでした。
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