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 にわかに布団がまくれあがった。見知らぬ男が、死体をあさっているところを見つかったハイエナみたいな顔で振り向いている。体はもちろん真っ裸で、貧相な体つきをしていた。俺の顔を認めると、ゴミ袋をあさっているところを見つかったカラスのような叫び声を上げる。 「なんだ、あんた。強盗か」 「それはあんたのほうだろう。人の恋人を奪っておいて」 「あ、美人局ってやつか」 「それならあんたにとって良かったんだろうけどな。しかし俺は本当の彼女の恋人だ。金じゃなくて命で払ってもらう」 「なんで恋人がタイツと覆面してんだよ」 「サプライズでな。強盗殺人犯のふりをして、プレゼントを渡すつもりだったんだ。しかしそれもふりをする必要はなさそうだな」 「ちょっと待ってくれ。俺はこの女と今日、バーで初めて会ったんだ。それにこいつのほうから誘ってきたんだぜ。まだ一線は越えてないし、今すぐに帰るからよ」 「分かった。そんな話を信じるやつは普通いないと思うが、俺は信じるよ。だから安心しろ。土に帰るのを手伝ってやる」 「だから待てって。彼女にも話を聞いてみろよ」  と、間男はベッドを見た。彼女は掛け布団を頭から被って、土に帰ったみたいに動かない。  そりゃあ顔を出しづらいだろう。俺だってこんな場面はごめんだ。けれども最後の言い訳だけは聞いてやろうと思って、男にナイフを突きつけたまま、布団を力任せに引っ張ってやった。むろん女々しく抵抗したが、やがて彼女の顔があらわになる。涙にまみれて苦痛に歪み、まるで別人のように見えた。
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