中学一年生

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鉛筆を使ってデッサンすることから始めます。鉛筆だけで光陰を付けようするのです。球体とか壁のコーナーとか光陰の差がある物体を描くのです。光が当たる所は空白とし、影の所は鉛筆で影を描きます。その濃淡で影の薄さや濃さを表現するのです。これは、書にも通じています。墨の濃淡で表情が変わる事を知っているため、その要領を初心者の部員よりも早く身につけました。5時になると部活が終わります。部長の合図で帰宅の途につきます。こういうわけで、書道教室通いは土・日・祝日に変更することにしました。 漢字と物体は相通じる所があります。どっちもメリハリ付けて表現するからです。時々、母親の似顔絵を描いてキッチンに飾る事もあります。また自慢のネタが増えた母親は団地で鼻が高くなります。ただ、ボスママに目を付けられないように五教科の成績が悪い事にしてあります。だから、子供に「勉強しなさい!」と叱る事はしませんでした。 中学校では、中間試験・期末試験の繰り返しです。団地の中では、東大進学に向けて猛勉強する子もいます。もちろん、母親たちは、どこそこの部屋にいる子はどこの高校・大学へ進学するのか知っています。もちろん、ココとニコも噂の対象となります。この二人は、芸術以外取り柄がない子としてあるのでエリート志望組から冷ややかな目で見られます。 だが、母親は団地追放よりはマシと考えて、エリート志望組の中には入らず身分相応なグループの中で収まりました。 よそのオバさんに頭を抑えられるとは本当に可哀想なものです。ココとニコは、自分の人生を歪められている事を知らないまま学校から与えられる課題を解決する事に努めるのでした。
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