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旅立ち
ココとニコは三年生になりました。参加した大会での賞や取得した資格に囲まれて、上級生としての威厳があります。二人に憧れる下級生もいます。それに奢る事は無く、次の目標を掲げて精進しています。二人は大学へ進学することにしています。それを晩ごはんを食べながら、母親と話しています。ココは、工業大学へ進学して卒業後は設計事務所に就職するつもりでいます。ニコは、美大へ進学して卒業後はアニメ制作会社へ就職する気でいます。
どっちも県外に出るつもりですから、二人が一緒にいるのは今年度が最後です。担任の先生と相談して、その大学へ進学するように願書を提出することにしました。三者面談も参加し、AO入試で受験することになりました。その日も、少し豪華な食事を母親と一緒に済ませてベッドに入りました。
試験日が近づくと、二人は宿を予約して受験会場で試験を受けられるようにしました。試験日になると、その下宿から会場へ向かい、試験を受けます。試験が終わると、団地へ戻ります。母親は、鍋を用意していました。本人が帰宅すると、煮えた具から食べ始めました。それまでの事を報告してその晩は盛り上がります。腹がいっぱいになったみんなは、後片付けを済ませてからベッドに入りました。
後日、合格通知が学校に届きました。二人とも今後の進路が決まったのです。その晩も鍋を囲んで大喜びしながら一日を終えました。3月になると卒業式が行われます。母親や後輩たちから祝福された行事が済むと直ぐに団地へ戻ります。
ここからが大忙しです。大学へ通えるようにアパートを探します。手頃な物件を見つけたら契約を結びます。必要な家具や教材を購入して部屋の内装を整えます。アパートの部屋の中がだんだんと整ってきて、団地の部屋にあった必要な家具や雑貨が新居へ引っ越した後は埃だらけです。そこは母親が掃除します。
子供たちが旅立った後の部屋が一気に広くなりました。掃除が一段落すると、母親たちは一気に老けた気になります。
その後、その大学で行われる入学式では母親同伴で行われます。狭い団地から羽ばたいた二人は大学生活になじみ、引っ越しをした日から滅多に会うことはなくなりました。
しかし、母親たちは相変わらず狭い団地社会に組み込まれながら老いを迎えるのでした。
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