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勇者の実力
老人の示した東の森を、エリスとヘラルドは先を競わんとばかりに駆けていた。
厳冬を迎える森の中は、日中と言えども底冷えする寒さを放っている。年の暮れと言う事が、殊更に寒さを演出し、二人により一層の寒気を感じさせていたのも事実だった。
そんな寒々し過ぎる森を抜け更に一刻程駆けた先で、二人は目的の館が伺える茂みに身を隠していた。
「……どうやら……間違いない様だな」
館を見据えるヘラルドが、苦々し気にそう呟いた。エリスもそちらの方から目を離す事無く、彼の言葉に無言で頷き同意する。
館周辺には、到底自然に集まったとは思えない程の多種多様な魔属が徘徊していたのだった。
「それで?」
「どうするんだい?」
基本的な性格が似通っているのか、ユウキとエデューンが言葉を分ける形で、エリスとヘラルドに問いかける。精霊たちの表情を見れば、どうしたいのかは一目瞭然で、隠す様子もなくウズウズとしている事が伺えた。
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