あれから

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 数か月前まで、彼女達は会話すら儘ならない関係だったのだ。それも専ら、エリスがユウキを徹底的に無視すると言う形で。  エリスはユウキの事を嫌っていた……いや、憎んでいた。  エリスはこう見えて、王都にて認められた、れっきとした“勇者”である。  この世界に、確認されているだけで200人しかいない、魔属と戦う事の出来る人界最高の戦力たち……それが勇者である。  勇者となれる者には、必ず聖霊と呼ばれる、まるで妖精の様な小人が顕現する。そして勇者たちは、その聖霊と融合する事で、信じられない様な力を手にする事が出来るのだ。  しかしだからこそ、勇者となった者は、有無を言わせず戦いの最前線へと放り込まれる。老若男女を問わずに、その者の意思など無関係で戦いに身を投じなければならないのだ。  エリスはそれが故に、村の幼馴染2人と、実の両親を亡くしている。  そしてそれこそが、エリスが聖霊を……ユウキを嫌悪し憎悪していた理由だった。  それでも戦いとなれば、互いに協力関係を取らねばならない。心に大きな蟠りを持つエリスと言えども、ユウキの助力無くしては立ち行かないのだ。  魔属との戦闘を重ねて行きながら、エリスは徐々にユウキとの関係を構築していった。    ―――そして……親しき者の死に直面して……。  皮肉ながら、そんな悲劇を前にしたからこそ、二人は大きく近づく事が出来たのだった。  一度はその身を消失させたユウキだったが、何の因果か再びエリスの元へと顕現し、それ以降は彼女の中の蟠りも随分と氷解しているのが現状だった。
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