終わりの始まり

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小刻みな振動がおさまり、屋上への扉が開いた。 目に飛び込んできた真青の空は、普段であれば極上の心地良さを与えてくれるはずであるのに。 障害物も雲も一つもなく、隅々まで澄み渡っている綺麗な碧色が、今は自分たちを嘲笑っているように思えてならない。 「何もないな」 少年が落下した際の目撃証言は幾つか取れており、自らの意思でこの屋上から転落したことに間違いはない。 赤に染まった靴は、遺体と共に既に回収されていた。 丁寧に揃えられた靴が、自殺の始発点に残されている時もあるのだが。 ここには本当に何もなく、所々に微細なひびを刻ませたコンクリートだけが冷たく佇んでいる。 数時間前にここで一人の人間が命を絶ったという現実が、皮膚から下へ浸透してこない。
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