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「ここで得られるものは何もなさそうですね。御家族と連絡がついたみたいので、一旦署へ戻りましょうか」
「ああ、そうだな」
杉田さんはそう言った後も、すぐにはその場から動かなかった。
子供好きな彼にとって、このような事件は無念でならないのだろう。
不意に、視界の端を何か白いものが掠めた気がした。
カサカサと音をたて、紙がコンクリートの上をスライドしていく。風に乗りながらビルの端へ向かっていくその姿を、目が勝手に追っていった。
このままではもうすぐ落ちる。
それだけが頭をよぎり、右足の爪先へ重心をかけた。
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