終わりの始まり

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「おい!」 後ろから響く大声に反応している暇はない。 一枚の紙が風に乗り、目の届かない所まで流れてしまえば、後で捜索が困難になるかもしれない。 追い付いた時には既に紙は床を離れ、完全に宙へと浮いていた。 片手で柵を掴み、上半身を建物外に乗り出してもう片方の腕を伸ばすと、ぎりぎり指先が届き感触を捕らえた。 不可抗力で真下の道路が視界に映ると、虫でも這っているかのように背筋がざわめきだす。 なんとか掴み取ったその薄い紙は、端の方が歪な扇形に破けてしまっていた。 今日は少し風がある。 重しを乗せられていなかったせいか、何時間も引きずられながらこの屋上を揺蕩っていたのだろう。 自己完結を終えて安心したのも束の間、後頭部に強い痛みと衝撃が走った。本日二度目である。
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