終わりの始まり

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放心した様子のまま胸に押し付けられた紙を、無言で受け取り目を通す。 少年らしい形の崩れた文字が、罫線に沿って規則正しく並べられている。 前半は遺書にありがちの文章だった。 『どんなに努力をしても、僕にはできないことがあるのだと分かった。才能のない自分に生きる価値が見出だせない。』 こんな事が死ぬ理由になり得るのかと、大半の人が疑問に思うのだろう。以前の俺もそうであった。 この仕事を始めて他人よりも多くの死と関わり、分かったことがある。 人によって、痛みや苦しみを感じる尺度や深度は様々だ。どんな事柄でも、人が自ら命を絶つほどの理由となり得る。
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