生贄

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「何、見惚れでもしたの?」 「まあ。綺麗だった」 挑発的にそう言ってきた少女は、次の瞬間には顔を勢いよく背けてしまった。 闇に紛れているので定かではないが、こころなしか頬が紅く染まっているように見える。 「ばっかみたい」 「…そういえば、なんで俺の名前を知っていた?」 「やっとそこに気付いたわね」 呆れたように言う少女の雰囲気は、先程より柔らかくなった気がする。 翡翠色の瞳からも警戒心は読み取れない。 「ある人に聞いたのよ」 「ある人って?」 「月島楸」
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