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「正直何もかもが分からない。ここが何処であるのかさえも」
「まあ、そうよね」
振り返った少女は軽やかに歩き出し、積まれたがらくた達の元へ進む。
がらくたのうちの一つを手にしたかと思ったら、それは楽器を保管しておくための入れ物だったようだ。
外側のビニールがボロボロに剥がれ落ちてしまい所々違う色彩へと変色している黒いケースへ、バイオリンを丁寧に収めていく。
ケースを背負うためのベルトが付いていたみたいだが、既に千切れてしまったのかだらんと垂れている。
取手の部分を持ち立ち上がった少女は、此方を見ながらアルトの声で話し出した。
「立ち話もなんだから行きましょう。今日は冷えるし」
「何処へ?」
「ゆっくりと話が出来る場所よ」
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