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「はじめまして、御幸柊平くん」
透き通った声に釣られ、視線を上げる。
いつの間に入ってきたのか、机を隔てた正面に見知らぬ女性が座っていた。
薄茶色の瞳に自分が映り込んでいる。久しぶりに目にした自らの外観は、我ながら随分と貧相だ。
髪、皮膚、瞳__。見える場所全て、色素が薄い。女性への第一印象はそれだった。
しかし、少しも病的には見えない。彼女の周りに漂う不思議な空気の真髄は、一体何なのだろう。
「私、心理カウンセラーの春野雪って言います。よろしくね」
握手を求められたが、手を上げることすら億劫だ。
『春野』と名乗った女性は、嫌な顔一つすることなく、出した手を机の下へ引っ込めた。
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