終わりの始まり

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「よし。じゃあ、今日もいつも通りだな」 杉田さんの『いつも通り』は巡回に始まって巡回に終わる。 人が好きな彼は誰にでも平等に接し、様々な人と積極的に関わろうとする。熊のような相貌を持つくせに、心はとても穏やかだ。 国の中央省庁の一つである平和維持省。 その中でも特に難関と言われている警察官。 この職へ就くための適性試験を、彼はほぼ満点でクリアしたらしい。 決して驕ることのない杉田さんは、自分には勿体無い上司だと思う。 正直、話し相手をもAIに代替させられる時代で、彼の行いを不思議に感じたこともあった。 老人の世話は機械に任せればいいことだし、犯罪を起こしずらい社会を巡回する必要性を問う者もいるだろう。 時代にそぐわない事を当たり前にやってみせる大人に、俺はここで初めて出会った。
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