終わりの始まり

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### 現場は十三階建てビルの真横だった。 自動式清掃機能ロボが既に遺体の回収を終えていたが、生々しい血痕は未だ残っている。 赤い華が散りばめられたように染まった地面は、落下時の衝撃を反映している。 目を瞑り、手を合わせてからビルの屋上を目指す。 上昇していくエレベーターの中で、杉田さんが深い溜息をついた。 正直俺でも気が滅入る。まだ先のある者が、若くして自ら命を絶ってしまうなんて。 様々な犯罪が急激に減少した中で、自殺率の低下は芳しくなかった。 昔より確実に発展を成し、人々がより簡単に幸福を感じられる社会へと進歩しているはずであるのに。 他者から受ける攻撃は防ぎようがあるが、自傷行為を未然に防ぐことは容易ではない。これも自殺率が激減しない理由の一つだ。
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