第二夜 追憶の城にて

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それに乗って、夏休みに入ったら遠出してみようと女の子は考えていました。 「お母さーん!行ってくるね!」 女の子は夏休みの二日目、予てからの考えを実行に移すことにしました。 本当は一日目でもよかったのですが、あいにくの雨で外に出ることができなかったのでした。 女の子は洗濯物を干しながら優しく手を振るお母さんに見送られて、小さな冒険に出発したのでした。 かごにはお気に入りの「白雪姫」を乗せて……。 女の子はいつも学校の窓から見える、森に行ってみようと思っていました。 窓から見えると言っても、遥か遥か遠くに見える場所でしたから、女の子にとってはちょっとした冒険です。 絵本の中に広がった小鳥たちのさえずる、花々が咲き乱れる明るい森。 白雪姫に王子様が出会った森。 そんなことを考えると、わくわくと女の子の胸は高鳴るのでした。 大きな国道沿いに出ると、黒い排気ガスに咽てしましました。 どんどん知っている町並みが、遠ざかって不安な気持ちにもなりました。 それでも女の子は小さな足で懸命にペダルを漕ぎながら、森を目指しました。 やがて、車も人も見えなくなると、目の前に沢山の青々とした木々が女の子を見下ろしていました。 女の子は、とうとう森に到着したのです。     
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