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森は女の子が想像していたような雰囲気ではなく、ひんやりとして薄暗い場所でした。
女の子は、少しがっかりしました。
いつも女の子が目にする絵本の中の森は明るく、綺麗な花々に溢れ沢山の愛らしい動物たちが仲良く遊んでいる。
そんなイメージでした。
でも、目の前に広がる現実はとても冷たい場所でした。
小鳥のさえずりも、聞こえません。
ただ、風に揺れる木々からざわざわというおそろしげな音がこだまするだけでした。
とても、こんな所に「白雪姫」に出てきた小人たちの家や、「ヘンデルとグレーテル」のお菓子の家も、「眠れる森の美女」のお城も、あるとは思えません。
すっかりしょんぼりしてしまった女の子は、ただ当ても無く、森の中を彷徨っていました。
すると、道の先に光が差しているのが見えました。
女の子はその柔らかな光に誘われるように、更に奥へ奥へと進んでいきました。
*
女の子はその光景を目にした瞬間、あっと声を上げそうになりました。
そこには「お城」があったのです。
それは、頑丈そうな門と蔦の絡まった塀に囲まれた大きなお屋敷で、鉄格子の嵌った門から覗く壁の色は真っ白。
沢山の大きな窓には、白いレースのカーテンが揺れています。
そして、その「お城」は真っ赤なバラの花で埋もれていました。
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