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それは、まさに女の子が憧れていた理想の「お城」でした。
空想の中で遊んだ「お城」でした。
女の子は自転車を止め、しばらくの間呆けたようにその「お城」を見つめていました。
「白雪姫」を握りしめながら……。
すると突然ドアが開き、中から誰かが出てきました。
その人物はとても背が高く、男の人のようでした。
女の子は見つかるのを恐れて、慌ててしましました。
どうしよう。どうしよう。と、不安になりました。
このまま逃げてしまおうと、慌てて自転車に跨りました。
その時です。
「おやっ。珍しいな。誰だい?」
と、声がしました。
少し低めでしたが、透明感のある綺麗な声でした。
女の子は突然呼びかけられて、びくんと身体を震わせました。
恐る恐る声の方に振り向くと、女の子はまたびっくりしました。
なぜなら、そこには「王子様」が優しく微笑んでいたのです。
もちろん、お伽話の中の「王子様」の様に、冠を被っているわけでも、マントを靡かせているわけでもありません。
ですが、その優しい笑顔を浮かべている顔が、まさに女の子の空想の中にいた「王子様」そのものだったのです。
「もう帰ってしまうのかい。せっかく、君みたいな可愛い女の子が来てくれたのに」
「王子様」は、そう言って女の子に近づいてきました。
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