第二夜 追憶の城にて

4/15
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
それは、まさに女の子が憧れていた理想の「お城」でした。 空想の中で遊んだ「お城」でした。 女の子は自転車を止め、しばらくの間呆けたようにその「お城」を見つめていました。 「白雪姫」を握りしめながら……。 すると突然ドアが開き、中から誰かが出てきました。 その人物はとても背が高く、男の人のようでした。 女の子は見つかるのを恐れて、慌ててしましました。 どうしよう。どうしよう。と、不安になりました。 このまま逃げてしまおうと、慌てて自転車に跨りました。 その時です。 「おやっ。珍しいな。誰だい?」 と、声がしました。 少し低めでしたが、透明感のある綺麗な声でした。 女の子は突然呼びかけられて、びくんと身体を震わせました。 恐る恐る声の方に振り向くと、女の子はまたびっくりしました。 なぜなら、そこには「王子様」が優しく微笑んでいたのです。 もちろん、お伽話の中の「王子様」の様に、冠を被っているわけでも、マントを靡かせているわけでもありません。 ですが、その優しい笑顔を浮かべている顔が、まさに女の子の空想の中にいた「王子様」そのものだったのです。 「もう帰ってしまうのかい。せっかく、君みたいな可愛い女の子が来てくれたのに」 「王子様」は、そう言って女の子に近づいてきました。     
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!