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門が、大きな音を立てて開きました。
女の子は少し後ずさりをして、絵本を強く握りしめました。
すると「王子様」は笑いながら、
「僕のことが怖いのかな。そうだよね」
と、少し困ったような顔をしました。
「王子様」細い指が、そっと女の子の髪に触れました。
女の子には、なぜかその部分が暖かく感じられました。
女の子が恐る恐る目を開けると、硝子のような瞳が怯える女の子を映して揺れていました。
「ほうら。怖くなんかないだろう……?」
その途端、女の子の緊張は解れていきました。
まるで、魔法の様でした。
「王子様」はそれを感じ取ったのか、にっこりと微笑みました。
女の子はその美しい笑みに、見惚れていました。
驚くほどに長いまつげに包まれた、吸い込まれそうな瞳。
少し長めの艶やかな髪。
石膏のように白い肌。
人形のように整った顔立ち。
どれを取っても、女の子の空想の中の「王子様」に違いありませんでした。
「そうだ……。せっかくこんな所まで来てくれたんだ。おもてなしをしないとね。おじさんの家で、お菓子でも食べるかい?」
女の子は、魅入られたようにただこくんと頷きました。
*
「お城」の中は女の子が思ったよりずっと、すっきりしていました。
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