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女の子はまるで、自分の空想の中に迷い込んでしまったようだと思いました。
いずれこの空想からまた、現実に引き戻されるのではないかと思い、思わず身体が震えました。
「どうかしたのかい」
女の子はその声で、気が付きました。
目の前には「王子様」がいて、女の子は心底ほっとしました。
年は、二十代後半位でしょうか。
少し長めの柔らかそうな髪で、透き通る程に肌が白く、着ているシャツの白さとあまり変わらないくらいでした。
顔立ちもかっこいいと言うより、美しいと表現した方がよいでしょう。
背丈と声を除けば、女の人のようでした。
「白雪姫が好きなのかい?」
彼は女の子がケーキを食べ終わりそうな時、聞きました。
女の子は、思わず膝の上にある絵本を見ました。
彼は続けます。
「こんな遠い所まで持って来るくらい、好きなんだね」
女の子は、ぽつんと言いました。
「お友達なの。大切な、大切な……」
「王子様」は、その一言で女の子の孤独さを悟ったのか、少し悲しそうな目をしましたが、すぐににっこりと笑って、
「じゃあ、おじさんとも、お友達になってくれないかな?」
と言いました。
女の子は、耳を疑いました。
そして、言い知れない嬉しさが込み上げてくるのを感じました。
女の子は、いつもひとりぼっちでした。
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