第二夜 追憶の城にて

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一人でいることには、慣れていました。 でも、心のどこかでは、楽しそうに笑い合うクラスメイトたちが、羨ましく思っていました。 そんな光景を目にする度に、堪らなく寂しくもありました。   絵本しか友達がいなかった私に、本当の友達ができる! 女の子は、嬉しさで泣き出してしまいそうでした。 「僕たちは、今日からお友達だ。よろしく頼むよ?」 「王子様」はそう言うと、片目を瞑って右手を差し出しました。 女の子はその柔らかな手を握り返しながら、この上ない喜びを噛み締めていました。 * それから女の子は月に二、三度位、学校帰りに「お城」へ行くようになっていました。 そのことは、誰にも内緒でした。 それは、お母さんも例外ではありませんでした。 女の子はこの至上の時を、誰にも邪魔されたくはなかったのです。 「王子様」との優しい時間を、独り占めにしていたかったのです。 いつそこに行っても、必ず「王子様」はいました。 そして、嫌な顔もせず、むしろ「よく来たね」と歓迎してくれました。 女の子には、それがとても嬉しいことでした。 女の子はいつも彼にその日、学校であった事を話したり、絵本の事を話たりしました。 彼はその話に耳を傾けてくれました。 彼女には、その事が最も嬉しいことでした。     
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