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今まで、自分の話をこんなに真剣に聞いてくれる人なんて、女の子にはいませんでした。
優しいお母さんだって「はい、はい、そうよかったわね」と家事に気を取られて、よく聞いてはくれません。
それなのに、彼はまだ幼い女の子の話を聞いてくれました。
そして、それに笑顔で答えてくれるのです。
それは女の子にとって、なによりも素晴らしいことでした。
これが友達というものなんだと心の底から喜びを感じました。
お母さんが、
「最近明るくなったわね。なにか、いい事でもあったの?」
と聞いてきました。
女の子は危うく彼の事を言ってしまいそうになって、とても慌てました。
そして、嬉しくなりました。
これは、秘密なのです。
「王子様」と自分だけの……。
無意識のうちに笑ってしまっていたのでしょうか、お母さんが不思議そうな顔で女の子を見つめていました。
*
「王子様」の所へ通いだしてから何度目かの夏が過ぎ、女の子はセーラー服の中学生になっていました。
優しかったお母さんは、近所の影響で突然教育ママへと変貌し、彼女を有名な進学校へ合格させようと躍起になっていました。
お父さんは相も変わらず家庭には無関心で、少女は人知れず更に深い孤独の中にいました。
その孤独を癒してくれたのは、他でもない「王子様」でした。
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