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彼は小学生の頃と変わらずに少女の話を真剣に聞き、甘えさせてくれました。
月日が流れても、彼の美しさは変わる事がありませんでした。
少女は彼と過ごす時に、ちょっとした胸の痛みを感じるようになっていました。
まだ幼い少女には、それが恋だという事に気がつくことはできずに、ただ不思議な心のわだかまりを感じるだけでした。
そんなある日、少女はお母さんと進学の事で衝突し、もう日が暮れているにもかかわらず、家を飛び出してしまいました。
気が付くと、あの「お城」に来ていました。
こんな遅くに訪ねるのははじめての事だったので、ちょっと躊躇しましたが、少女には他に行く所がありません。
少女は躊躇いながらも「お城」のドアをノックしました。
「あれ、かりんちゃん。どうしたんだい?こんな時間に」
予想通り彼は驚いた表情でしたが、いつもにも増して緊迫しているであろう少女の顔を見ると、すぐに中に入れてくれました。
「ご両親は知っているのかな」
少女をソファに座らせ、暖かいココアを勧めると、彼は切り出しました。
少女はゆるゆると、頭を振りました。
「心配しているだろうね」
少女は少し俯きました。
「何かあったのかな」
「王子様」の優しい言葉と眼差しを目の当たりにした瞬間、張り詰めていた糸が切れてしまったのでしょか。
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