第二夜 追憶の城にて

12/15
前へ
/45ページ
次へ
耳を澄ますと、それはどうやら一番奥の部屋から漏れてきたもののようでした。 きっと、あの部屋に彼はいるんだ。 少女はほっとして、泣きそうになりました。 ドアに近づくと、果たして聞こえてくる声は彼のものに違いありませんでした。 ですが、少女はおかしな事に気がつきました。 どうやら、彼は誰かと会話しているようなのです。 誰かいるの? 少女はノックしようとした手を止め、耳をドアにつけて様子を窺いました。 「ああ、あの子は僕の友達だよ。いやだな、嫉妬しているのかい?」 彼の笑い声がしました。 微かに相手らしい声もします。 でも、その声はくぐもっていてよく聞き取れません。 「君らしくないな。でも、嬉しいよ。……ああ、もちろんさ」 彼は少し声のトーンを落としました。 ですが、次の瞬間放たれた言葉は、はっきりと少女の耳に響きました。 「愛しているよ。レイカ」 少女にはそれからの記憶がありません。 気がつくと、少女は再びあのベットに寝ていました。 微かに、枕が湿っています。 もしかしたら、泣いていたのかもしれません。 「アイシテイルヨ。レイカ」 フラッシュバックする、その言葉。 頭が痛い……。 どうしてしまったんだろう。私……。 頭が、胸が、軋むように痛い。 いたい……。 どうして……? 視界が霞む。 アイシテイルヨ……。     
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加