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いたい……痛い……イタイ……!
レイカ……。
その時、少女の脳裏にあの写真の女性が。
もしかしたら、あの人が……?
思わず写真に振り返ると、相変わらず女性が艶やかな笑顔を振りまいていました。
少女には、真似の出来ない大人の魅力。
少女はどうしようもなく悔しくなって、その写真立てをパタンと倒してしまいました。
翌朝、いつも通りの朝日そのもののような彼の顔を見るのが辛くて、少女は逃げるようにして「お城」を後にしました。
家に帰ると、お母さんのヒステリーが待っていました。
*
それから少女は気まずさから、ひと月ほど「お城」を訪れることもなく、夏休みを迎えました。
ふと、「王子様」のことが恋しくなりました。
彼はどうしているのかな……。
元気でいるのかな……?
アイタイナ……。
一度彼のことを考えると、少女はもう堪らなくなって、自転車を走らせていました。
息を切らせて「お城」に着くと、高鳴る胸を沈めるように深呼吸を一つ。
少女は震える手で、ベルに手を掛けました。
聞き慣れた、涼やかなベルの音が響きます。
どうしたことでしょう。
いつもはすぐに開いて、彼の優しい笑顔が迎えてくれるはずのドアは、今日は微動だにしません。
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