4.手紙

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翌朝、スタッフに促され、部屋を出る。 用意されていたのは、白い壁の明るい部屋。 窓からは海が見えるようベッドが置かれていた。 最期を迎えるにはあまりに明るい・・。 ベッドの横に置かれたテーブルには誓約書が置かれている。 「こちらに名前を記入してください。内容はお伝えした通りのものです。」 猛は読めない誓約書の文字に一応上から目を通す。 そして、迷いなく名前を書いた。 その後、ベッドに横たわり、手に点滴の準備がされる。 青い空と青い海が見える景色を見ているうちにも最後の儀式に向けた準備は進む。 顔が見える位置にビデオカメラが置かれ、録画が始まった。 手元には英語で書かれた宣誓文がある。カメラに向けて読むように言われた。 予め練習をしておいたのが良かったのかもしれない。 淀みなく、落ち着いて読み上げられた宣誓はきちんと録画されている。 「このまま、最期まで映像は録画します。」 宣誓が終わった後、点滴には薬品が入れられた。 「気持ちが決まりましたら、点滴のストッパーを開いてください。 それですべてが終わります・・・」 そして猛の手にストッパーが握られる。 軽く指を滑らせれば、すべてが終わる。 「ありがとう・・」 猛はみんなの目を見て、一言お礼を言うと、迷いなく点滴のストッパーを開いた。 そして、すぐに眠りにつき・・そのままこの世界から旅立った。
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