1.おたがいのルール

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猛と葵が出逢ったのは1年ほど前のことだった。 「上杉君・・。今度の出張の件だが・・。」 上司の本谷課長に葵は呼び止められた。 「はい・・来週には大阪に向かえるよう引継ぎは進めてます。」 「2ヵ月ほどの長期になるから、正直少し申し訳ない気持ちもあるんだが・・他にすぐ出張に出られる人間がいなくてな・・・。」 葵の会社はある携帯電話会社の子会社だった。 新規サービスの展開に関連して、大阪に新しくコールセンターを開設することになったのだが、新サービスに関する説明ができる人材をコールセンターに置き、研修などを行うために東京本社より誰かが向かう必要が出た。 葵の部署には妊娠中の女性や家庭の事情で出張が難しい男性などがおり、本谷課長は人選に苦慮していた。 結果、独身の葵に白羽の矢が立ったのだった。 「2か月、気分転換するつもりで行ってきますので・・。気にしないでください。」 気分転換・・正直、何かの変化が今生活に欲しいという気持ちはあった。 大学を卒業してこの会社に入り、大学時代からの彼氏との交際・・。 日常に大した変化もなく、ただ仕事をこなす日々。週末に彼氏と会う生活もだんだんとマンネリ化していた。
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