4.手紙

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診察が終わり、用意された部屋に入る。 ベッドに腰かけ、やっと一息がつける時間が訪れた。 部屋の窓からも空が見える。 すでに夕方を迎え、空は色を変えていた。 こうやって、あと何度空を見ることができるだろう・・ 彼女は空を見上げたり・・・そう思いかけて、止めた。 いつだったか・・そんなメッセージを送ったことがあった。 やっぱり、心に遺っていたんだと思い知らされる。 別れた時にすべてを棄てたつもりだったのに・・ データは消せる・・思い出の品は捨てられる・・ それでも記憶は棄てることはできない・・・ もしかしたら愛情も・・・ 決して望んではいないのに、いつまでも脳内にこびりついている・・ そんな想いを噛みしめ始めた頃にドアがノックされた。 「失礼します。」 入ってきたのは日本語を話せるスタッフと医師だった。 おそらくは医師の通訳としてついてきたのだろう。 「診察お疲れ様でした。診察の結果、星野さんは当団体での安楽死が認められました。それに伴い、医師よりこれからの流れ、必要書類の記入方法、注意点などを説明して頂きます。そして私が通訳させて頂きます。」 医師からまず説明されたのは、この部屋で3日過ごす必要があるという事だった。 3日間熟考し、思い直すことがあれば、取り止めることができるようにとの配慮から来ている。もっとも、そこで思い直すような者がわざわざスイスまで来ることはないとも思える。しかし、これは二度とやり直しができない処置だからこそ、迷いなく済ませたいという団体側の配慮だった。
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