4章

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4章

 『水崎美緒』それは、私の名前だ。なんで私の名前がこの日記帳に書かれているの?一人疑問に思っているとりっくんが、私に日記帳を手渡してくれた。すぐさま私は日記を読み始めた。どのページを見ても私の字の癖である丸文字だった。私が混乱しながら日記を読んでいると、当時の事を思い出したのか、とうとうりっくんは泣き始めてしまった。リビングでは、私が日記帳を捲る音とりっくんの泣く声、そしてテレビから場違いな笑い声がしていた。 「……ねえ、りっくん。カレンダー見ていい?」 いまだに泣いているりっくんに聞くと「うん」と頷き、カレンダーを渡してくれた。そして、一枚づつカレンダーを捲っていくと、あるページのある日にちに赤丸がしてあった。 「……、五年前の今日。つまり、8月20日。僕、真田陸と水崎美緒が付き合い始めた日であり、僕と君が付き合い始めた日でもあるんだよ。」 泣きながらそういうとりっくんは青いリボンのついた小さい箱を私に手渡した。 「……、ここからは、僕の推測でしかないけど。きっと美緒は僕にこれをプレゼントしたかったんだと思うんだ。だから君から僕に送ってくれないか?」 恐る恐る箱を開けると、中には水引で作られた指輪が入っていた。……まだ、信じられないけど、日記帳に書かれた私の名前と同じ癖のある丸文字。そして、この話をりっくんがしてくれたこと。ここから推測するに、この日記を書いた人物と私は同一人物だ。 「……本当に私からでいいの?」 「美緒が作ったものなんだから、君からもらわないと意味ないよ」 そういうと、りっくんは左手を私に差し出した。私は、りっくんの左手の薬指に水引の指輪をはめた。すると、りっくんは嬉しそうに指輪を眺めながら「ありがとう」と言った。なんだか私も嬉しくなった。
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