家族になろうよ

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「私には、そんなものいらない」 「どうして?」 「あの人のように……きっと壊してしまうから」  君の言うその人のことを僕は知らない。  でも君が今までどれだけ傷つきながら生きてきたか。  どれほどのしなくていい苦労をしてきたか、よく知っている――。 「大丈夫、きっと君はそんなことしないよ」 「どうして分かるの! あなたは知らないのよ、私がどんなふうに育ってきたかを」 「佑香……」 「愛されずに育ってきた私が! どうして人を愛することが出来るというの!?」 「あなたと私は違うのよ」  親から捨てられ施設で育った佑香は、家族の温もりを知らない。  私に家族なんていらないわ――そう言うと、佑香は僕に背中を向けた。  華奢な背中。  その震える背中を、僕は何度も何度も見てきた。  けど、本当は――その背中を、僕が抱きしめてあげたかったんだ。
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