8人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
「私には、そんなものいらない」
「どうして?」
「あの人のように……きっと壊してしまうから」
君の言うその人のことを僕は知らない。
でも君が今までどれだけ傷つきながら生きてきたか。
どれほどのしなくていい苦労をしてきたか、よく知っている――。
「大丈夫、きっと君はそんなことしないよ」
「どうして分かるの! あなたは知らないのよ、私がどんなふうに育ってきたかを」
「佑香……」
「愛されずに育ってきた私が! どうして人を愛することが出来るというの!?」
「あなたと私は違うのよ」
親から捨てられ施設で育った佑香は、家族の温もりを知らない。
私に家族なんていらないわ――そう言うと、佑香は僕に背中を向けた。
華奢な背中。
その震える背中を、僕は何度も何度も見てきた。
けど、本当は――その背中を、僕が抱きしめてあげたかったんだ。
最初のコメントを投稿しよう!