プレゼントとの別れ方

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 「あ、やっちゃったかも。」と、咲紀(さき)が思ったのは、西に傾き始めた陽光が差し込むベッドの上でだった。  きっかけはランチタイムの同僚女性達の会話であった。  食事の手もおざなりに、皆はつい数日前に彼氏や夫から贈られたクリスマスプレゼントについて好き勝手な批評を繰り広げていた。かしましい女性達の中にあって、今年、誰からもプレゼントを貰うことがなかった咲紀は、十年間付き合った元恋人からの贈り物の数々を脳内で振り返っていた。  現在も目につく場所に置いてあって見る度にああこれも彼から貰ったのだと日々感傷的な気分にさせられる物もあれば、クローゼットに仕舞ったきりの物もある。しかし、腐るもの以外で恋人からのプレゼントを捨てたという記憶は別れる以前も以後も全くなかった。  別れた男との思い出の品を新年に引き継ぐこともあるまいと考えたところで、自宅カレンダーの明日の枠にメモした「ごみ回収最終」の文字を思い出した。世間に比してまめに贈り物をし合う関係ではなかったが、誕生日、クリスマス、ホワイトデー…十年の付き合いがあればプレゼントもそれなりの数にのぼる。  それを一晩で部屋中残らずかき集め、ゴミ袋に詰め、ゴミ置き場に放り込む。  突然発案した今晩の計画を決行すべく、咲紀は彼女にしては珍しく就業時間きっかりで金曜の職場を後にした。
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