プレゼントとの別れ方

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 ここ三、四年のお互いのプレゼントといったら、欲しいものを直接聞いて、それをやり取りするだけだった。品番の指定をしたことさえあった。サプライズまで仕掛けなくても、相手の事を想いながらプレゼントを選ぶことをすれば何か違っていただろうか。  堂々巡りの思考にはまり始めた自分に気づき、咲紀は考えを振り切るように作業を再開した。こう考え込む時間にうんざりしていたから、こうやって過去に貰ったプレゼントを捨てようと決心したのだ。  時を遡る程に貰った物の記憶があやふやになってきた咲紀は、過去のスケジュール帳に残した覚え書きを頼ることにした。デートの内容などというものも視界に入ってくるが、できるだけ貰ったプレゼントの情報だけを機械的に拾っていく。二人で過ごした時間はむしろ退屈なことが多かったはずが、思い出すことはいいことばかりで、精神的にかなり消耗させられる作業となった。  お互いが社会人になりたての頃にプレゼントされた物を手帳で確認したところで、咲紀はしばらく縁のなかった類の物の存在を思い出した。  ブランド物のハンドバッグ。通勤用には使えない、完全に休日用の可愛らしいサイズとデザイン。実用品とは言い難いそれは、恋人である女性へのプレゼントとしてとても相応しいものに思えた。今よりいくらか若かった自分にもそれは少し乙女趣味が過ぎる品だったが、これを持つために服装と荷物の量を見直した。かなり使い込んだのを友人に笑われてからは使うのを辞めたが、捨てずにクローゼットの一番上の段にとって置いた。  椅子の座面に上って古びたハンドバッグに手を伸ばすとその横には引っ越した時からそのままのプラスチックケースが鎮座していた。
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