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使い道
もう高校3年で、おそらく今回が黙ってもらえる最後のお年玉だ。友人の顔を思い浮かべつつ年が明ける前からずっと考えていた。
どういう物を買うべきか。
そして俺は決めた。
その日は始発の新幹線に乗って二つ隣の県に向かった。通勤のサラリーマン以外は見当たらない車内。年が明けたばかりで寒さが辛いけれどそんな弱音は吐かない。
駅について近くの喫茶店で暖まり、朝食をとったら出発だ。
山の麓のお地蔵さまに手を合わせ、山の上の神社を目指す。案内には3時間くらいで着くと書いてあった。俺の足なら5時間だろう。
それでも足で登ってやるんだ。
決めたんだ。
驚いた事に、神社まで6時間かかった。俺は途中で神隠しにでも合っていたのではないだろうか?
でも大丈夫だ。今日はこの神社内にある宿に泊まるのだ。山を降りるのは明日だ。
俺はお参りをすませ日が暮れるまで眠ることにした。ちょっと疲れすぎて風呂に入る気にもならない。
夜、外に出て空を見上げる。
『よし!』
ポケットから電話をとりだし、ベッドの上の友人にテレビ電話をかける。
「よう。歩いて登ったぜ。遭難しかけた」
「お前、アホだろう」
「見ろよ、これ」
俺はカメラを夜空に向けた。
「すげぇ……」
山の上にしかない景色。
「今度は一緒に来ようぜ」
「お前なぁ……本当にアホだろう。ロープウェイあったくせに」
「治るから。願掛けしたし、お参りもしたから」
「……おぅ」
俺は、満天の星を買った。
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