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はるかぜ
春の生ぬるい風が吹い鬱陶しい。春は嫌いだ。新たな出会いとか、別れとか、新生活だとか、どうでもいい。何も変わらない。俺には関係ない。
講義中。出席点や講義点などない俺が所属する学部は明らかに二分する。
前列で学業に励むやつ、後ろでバカみたいに喋っているやつ。
明らかに二分するのに俺はどちらにも入れない。後ろで話す元気も友達もない。といっても前で勉強するなんて無理だ。
せいぜいこの場にいることで精一杯。だから大教室の窓側前から7番目に座ってなんとなくノートをとる。そうやって90分を過ごす。それを何度か繰り返せば1日が終わる。
これがここ1年の俺の日々。
今日もそうなんだと思っていた。あと一コマで今日の講義は終わる。そんな4限目。
「はじめまして。今年からこの△△大学で准教授として招かれました。日野と申します。よろしくお願いします。この前期は民法C、後期では民法Dを担当することとなっています。」
大学の先生にしては若そうだと思った。その次になんて整った顔をしてるのだと。
優しそうな雰囲気を持っていた。だからこの科目はカモだろうなと教室にいるほとんどの学生が思っただろう。
そして日野はこう続けた。
「私の講義ではみなさんの受講態度で試験の難易度を設定したいと思います。多くの人が良くてもたった1人私語をしたりするだけで難易度は上がりますのでお気をつけください。」
前言撤回。こいつは鬼だ。
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