可愛いとか、知りません

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殺気じみたそのジットリとした視線は最早死線であろう。 背中に冷や汗が流れる。 見てはいけないと思ったが好奇心が恐怖に勝った。 そっと紅葉の木を見ると緑の葉の隙間から──紅い双眼と目が合った。 明らかに動物ではないし、僕に当てられている的確なその殺気のような眼差しは…不意に和らぎ、残光だけを残しどこかへ消えた。 「っは…」 何時の間に息を潜めていたのだろう、バクバクとなる心臓の辺りをそっとおさえ深呼吸をする。 あの鋭い眼差し、柔らかな瞳。なにより、紅い色… 今の、人は… 「──こっこがおくじょーか!!!!!!!!」 「…っ!」 考える前に扉が開き誰かが屋上へと来たので、慌てて貯水タンクの裏へ。 早く立ち去りたいところ。 だが、バレずに帰るのは難しい。 何故なら今入ってきた人のそこしか屋上への出入口がないから。 とりあえず影になってるし、息さえ潜めて気配をなくせば大丈夫かな。 でも入ってきた人の気配もなかった…要注意。 …ってか、“こっこがおくじょーか”? “ここが屋上か”って言ったのか…? 「おい、そんなにはしゃぐな、(かい)
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