ささやかな復讐

原因

　12月も半ばになる。

　既に進路も決まった高校3年の俺達だが、学生である以上、テストからは逃れられず…

　とは言え、ビリヤードのプロになる気の俺が、まともに試験勉強などする訳がなく…

　返ってきた答案用紙は、散々な物だった。

　赤点のオンパレード…特に数学は白紙で提出したから、先生から呼び出しが掛かるのも当然と言えよう。

　数学の教科担任の村川先生は、俺を職員室に呼び出すなり質問してきた。

「…平野。これ、どういう事だ。」
　俺を目の前に立たせたまま、村川先生は答案用紙を指差す。
　そこには名前だけが書かれた、完全な白紙の俺の答案用紙があった。
　まるで何かに反抗している不良学生のようである。

「…どういう事って言われてもね…」

「…解んねぇんか？」

「解んねぇんです。」

「本当に解んねぇんか？1問も？」

「解んねぇんです。」

　そもそも俺は、まともに授業に出ていない。
　公式なんか習ってないんだから、解る訳が無い。
　数学だけに選択問題もあらず…結果、今の惨劇を迎えた訳だ。