3. 好きだからこそ…

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「ぁ…そんなに、固くならなくて大丈夫だよ。 愛ちゃんは、知らなくて当然なんだけど、オレ、すみれちゃんの事も知ってるし」 「えっ?……母の事、ご存知なんですか?」 ぁ…そうか。一条さんの友達なら、知ってて当然か。 「そう。それに、訊いたって言っても、愛ちゃんの扱い方だから」 「扱い方…?」 「集団が苦手とか…自分より背の高い男が、怖い…とか…?」 たまたま赤信号で止まって、オレの方を見た哲哉さんと、視線がぶつかり、咄嗟に逸らしてしまった。 「オレも、龍児ほどじゃないけど、愛ちゃんよりは、背が高いかな」 信号が青になり、再び走り出す。 「オレの事も、怖い?」 「いえ…」 何かもっと説明した方がいいと思うんだけど、言葉が、思い浮かばない。 全然、怖くないのに…。 「着いたよ」 ……ぇ… 外に目を向けると、見覚えのある風景。 でも…その前に 「哲哉さん。帰りも、お話し出来ますか?」 「ぇ…ぉ…おう。いいぜ。でも、その前に、やる事ヤッて来なきゃな」 「はい!」 オレ達は、向川高校の正門に立った。 「今、昼休みだから、比較的入りやすい時間帯だとは、思うんだけど…、ああっ!」 哲哉さんの視線の先を見ると…先生? 体育教師なのか、ジャージ姿だ。 「宮内、オマエ断ったんじゃねぇのかよ!」 哲哉さんの問は、スルーして、オレに視線を移すと、少し驚いたように、目を見開いた。 「すみれちゃんに、そっくりだろ?」 何故か得意気な哲哉さんは、またスルーされた。 そんな彼に、ムッとしたようで、 「いいか?邪魔するなら、公務執行妨害で、逮捕するからな」 「公務じゃねぇだろ?」 えええっ? 刑事さんなの?そりゃ、公務員に間違い無いけどさあ… 「オレは、教師だ。オマエらが、これから、やろうとしていることには、反対だ」 物凄い圧迫感で見下ろされ、思わず、哲哉さんのジャケットの裾を掴んでいた。 「退けッつったら?」 哲哉さんの声が、低くなる。 「いいから聞け。 オレはこれから、校内巡視に行く。もしかしたら、オマエらが行きたい所も、通るかもしれないが、知った事じゃねぇよな?」 「…そういう事かよ」
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