3. 好きだからこそ…

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まるで、全校生徒の前で、愛が全裸になってるのを黙って見てるような…そんな感覚。 早く、毛布で包んでやりたいのに… 悔しくて、情けなくて、涙が滲んできた。 「オイ!紫津木! しっかりしろ!」 「北本…」 「オレ達は、耳を塞いでいてもいいが、オマエは、しっかり聞いてやらなきゃいけないんじゃねぇの?」 ぇ…?何…? 「紫津木に対する誤解を解きたいっていうのが、一番だろうけど、こうやって、皆の前で話す事によって、今まで直視する事を避けてた過去を乗り越えようとしてんじゃねぇの?」 ぇ…え…? 「…だったらオマエが、見届けてやらなきゃダメだろ!」 ぇ…ぁ…っ…そう…なのか? 確かに、アイツは、オレと居ても、どっか遠慮がちで… それは、自分の過去に引け目を感じているからで… だからオレは、アイツの過去ごと腕の中に閉じ込めた。 世間の目に晒されないように。 だが…それじゃダメだったのか…? 『でも…そんな私に、もう一度、命を吹き込んでくれたのが、藍でした』 愛… 『藍は、私が、男娼だという事が、わかってからも、毎日のように来てくれて、時には、男達を追い返してくれました。 書き込まれていたような、毎晩、私を買ってたなんて事は…一切ありません! ただ…私を買ってたフリをして、後から来る男達を追い返してただけです』 ペリッ 隣で、じっと聞いていた北本が、布テープを剥がし始めた。 不思議に思いながら、様子を伺っていると、 「紫津木。オマエ…いい男だな」 と、手を止める事無く呟いた。 「な…っ何言ってんだよ」 「バーカ。そんなカッコで、照れてんじゃねぇよ」 「うっせぇ。テメェが、やったんだろ」 オレは、自由になった手首をさすりながら、 足のテープを解いている、小学校からの親友を眺めた。 「…北本さ…」 「あ?」 「…たまには、いい事言うよな」 「なんだよ。いい男ってか?」 「違ぇわ。その前だよ」 「は?何だっけ?」 「うん…サンキュな」 紫津木藍 side end
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