3. 好きだからこそ…

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哲哉さんは、マイクの前で、舌をチロっと出してから、再びマイクを譲ってくれた。 「…皆さんに、お願いがあります。決して、犯人探しは、しないで下さい。 そんな事をしても、いい結果は得られないし、何より藍が、嫌がります。ヘヘッ」 「すみません。ちょといいですか?」 「ぁ…はい」 最初から、同席していたスーツ姿の男性が、スッとマイクに近づいてきた。 マイク…というより…オレの唇に近かったので、かなり焦った。 「皆さん、こんにちは。私、サイトの運営会社で、こちらの担当をしております、大河内匠と申します。 2ーA 大河内薫は、私の妹です。いつもお世話になっております。 さて、今回の件につきましては、私共も検討の余地があると、考えております。 つぶやきの内容や、それに対しての通報システム、私共の管理システム等、検討させていただき、近々に、反映させていただきますので、よろしくお願いします」 大河内さんは、オレに微笑みかけてから、オレの後ろに下がった。 「ぇ…最後に、お願いがあります。この放送をするにあたり、協力してくださった方々 は、私が勝手にお願いしただけなので、何の罪もありません。学校関係者の皆さん、罰するなら、私だけにして下さい。 最後に、この度は、お騒がせしてしまい、申し訳ございませんでした」 プチッとスイッチを消し、息を1つ吐いたと同時に、身体の震えが一気にきた。 終わった…?ちゃんと言えた? 振り向くと、哲哉さんと大河内さん、放送委員の人が拍手をしてくれたので、それでやっと、やり遂げたのだと感じることが出来た。 「哲哉さん、大河内さん…えーと…?」 「加藤です」 「すみません、加藤さん。今日は、本当にありがとうございました」 「言いたい事は、言えた?」 「ええ…まあ…伝わってくれてたら…嬉しいんですけど」 「それじゃ…帰るか? オレの役目は、家まで無事届けて終了なんでね」 「はい。…お願いします」 オレが出口に行きかけると、手首を誰かに掴まれ、阻まれた。 「あの…その前に、ちょといいですか?」 大河内さん…? 「ごめんね」 と、彼は、申し訳無さそうに呟いて手首を離すと、とても話し辛そうに、話し始めた。 「オレの事…覚えてない?」 「…え…っ?」
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