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大河内匠さん。大河内…匠…さん…?
そうだ。藍と同クラの大河内薫さんの名前を聞いた時も、どこかで?…て、思ったんだ…。
「え…と…?」
何処でだっけ?
「いつも、ラフな格好だったし、前髪も下ろしてたから…ね」
と、苦笑いを浮かべる。
ぇ…と…ラフな格好…
この顔に前髪……
…ぇ…?ぁ……え…っ?
えぇぇぇっ?!
嘘……ど…どうしよう…
思わず後退ってしまい、机にぶつかってしまった。
「思い出してくれたみたいだけど、やっぱり、僕との事は、辛い思い出?」
イヤ…違う…辛いんじゃない…
むしろ、その逆。
大河内さんは、安堂の客のひとりだったんだけど、一度もオレに触れる事は、無かった。
いつも他愛のない話をしてくれた。その中で、妹さんの話をよく聞いたので、薫さんの名前も、それで聞き覚えがあったんだ。
「やっぱり、忘れたくなるような辛い思い出だった?」
返事を躊躇してると思った大河内さんが、答えを逆に解釈してしまった。
「ち…違います!大河内さんとの時間は、唯一、人として息ができる貴重な時間でした。
ただ…そんな時間をオレに与えてくれた大河内さんの事を忘れてたなんて…
自分の事が許せないというか…」
「いいよ。きっと今が幸せだから、忘れていられたんだと思う。 貴重な時間だと思ってくれてたなんて、それだけで十分だよ」
「大河内さん…」
「逆にごめんね。思い出させちゃって…」
「いえ…あの…」
前からずっと知りたかった事。
大河内さんなら教えてくれるかもしれない。
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