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「あの…大河内さん…オレ…ずっと知りたかった事があって…」
「うん…何?」
「それは…その…」
ああ…いざ、その言葉を口にしようとすると、唇が震えてくる。
でも…今訊かなきゃ…知るチャンスは、もう訪れないかもしれない。
イヤ…知る術は、他にあるのかもしれないけど…オレに、その勇気が無いだけ。
「大丈夫だよ。言ってごらん?」
大河内さんは、震えるオレの手を握りしめて…安心させようとしてくれてる。
ごめんなさい。大河内さん。オレが訊きたい事は、もしかしたら、あなたが答えたくない事かもしれないのに…
「愛さん?」
でも…以前と変わらない、オレを呼ぶその優しい響きに背中を押され、迷いが消えた。
「大河内さん…」
「ん?」
「安堂は…」
安堂の名前を出しても、変わらずオレを包み込もうとしてくれてる優しい瞳に、最後の勇気を貰った。
「安堂は、お金を受け取ってたんですか?」
この質問に、驚いたのか、引いたのか、目を見開いたまま、固まってしまった。
「ぁ…あの…?」
「ぁ…ごめんね。その…安堂さんに訊いた事は、無かったの?」
「あるけど…オマエは、知る必要無いって…。オレの事…道具にしか思って無かったから…。」
「…そうですか。」
そう困ったように呟いてから、哲哉さんに視線を向けると、
哲哉さんは、何も聞いて無いとでも言うように、背中を向けてしまった。
それを確認すると、オレに視線を戻し、ゆっくりと口を開いた。
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